きこえの手帖の使い方|聞こえの変化を記録する意味

書くのは2か所だけ

補聴器をお求めいただいた方に「きこえの手帖」をお渡ししています。A5サイズの薄い冊子です。何が書かれていて、どう使うものなのかをご説明します。

なぜ感覚だけに頼らず数値で確認するのかという考え方は、「きこえの手帖」でわかる、あなたの聞こえの変化でご説明しています。こちらの記事では、実際の中身を1ページずつ見ていきます。

目次

最初のページ – 耳の状態をうかがいます

まず、耳の手術を受けたことがあるか、最近耳が痛くなったか、急に耳鳴りが大きくなっていないか、耳あかがたまっていないかなど、いくつかの項目をうかがいます。

きこえの手帖の最初の見開き。左ページに耳の状態の問診、右ページにオージオグラムと音の大きさの目安、ことばの聞き取りの測定表、補聴器の器種・電池・耳栓の記録欄
最初の見開き。左が耳の状態の問診、右が聴力の記録とことばの聞き取りの測定表

これは補聴器を売るための質問ではありません。先に耳鼻咽喉科を受診していただいたほうがよい状態かどうかを確かめるためです。当てはまる項目があれば、受診をおすすめすることがあります。受診の目安もあわせてご覧ください。

続けて、難聴に心当たりのある原因、聞こえにくさを自覚した時期、とくに困っている場面、これまでの補聴器のご使用経験をうかがいます。困っている場面は「1対1の会話」「3人から4人での会話」「騒がしい場所での会話」「テレビ」「電話」から選んでいただく形です。ここが機種選びと調整の出発点になります。

聴力の記録 – オージオグラムと音の目安

測定した聴力をオージオグラムに記入します。読み方は聴力検査でわかることをご覧ください。

手帖には、その横に音の大きさの目安が並べてあります。20デシベルが小鳥のさえずり、30デシベルが秒針の音、60デシベルが会話の声、70デシベルが電話、80デシベルがトラックの走行音、100デシベルが工事・建設現場、110デシベルがジェット機の飛ぶ音です。数字だけではぴんと来ないところを、身近な音に置き換えて見られるようにしてあります。

同じページに、ことばの聞き取りを調べる測定表と、お使いの補聴器の器種、電池のタイプ、耳栓の記録欄があります。電池の型番を覚えていなくても、ここを見れば分かります。

装用アンケート – 使い始めて1週間から1か月

実際に使ってみて、どの場面でどれくらい聞き取れているかを10項目でうかがいます。静かな場所での1対1の会話、外での会話、買い物やレストランで店の人と話すとき、近づいてくる車の音、電子レンジの音、後ろから呼びかけられたとき、人混みでの会話、4人から5人の集まり、小声、テレビのドラマ。

きこえの手帖の装用アンケートのページ。10の場面ごとに聞き取れる程度を記入する表と、補聴器装用閾値の1回目から3回目の記録欄
左が装用アンケート(10項目)、右が装用閾値の記録欄(1〜3回目)

それぞれ「いつでも聞き取れる」から「いつも聞き取れない」までで答えていただきます。これが、次の調整でどこを詰めるかを決める材料になります。気になることを書く欄もありますので、うまく言葉にできない違和感でも、思いついたまま書いてください。

この10項目は、全国調査で満足度が低く出ている場面とほぼ重なっています。日本補聴器工業会の調査では、1対1の会話の満足度が57%あるのに対し、多人数での会話は39%、周りがうるさい環境での会話は36%、騒音下での聞こえ具合は34%。いずれもお店の静かな部屋では確かめられない場面です。

同じ調査で、満足するまでの調整回数は3回から5回がもっとも多く32%、3回以上が合わせて53%でした。何度か通って詰めていくのが普通だということです。そのときに前回からの変化を具体的に伝えられるかどうかで、詰め方が変わります(出典:JapanTrak 2025(一般社団法人日本補聴器工業会))。

装用閾値 – 6回分の記録欄があります

補聴器をつけた状態で、どのくらいの小さな音まで聞こえているかを測った結果を記入します。手帖には1回目から6回目まで、6回分の記入欄があります。

グラフには「ゴールのめやす」が引いてあります。最初からそこを目指すのではなく、少しずつ上げていくという前提で作られています。慣らしの途中であることが、記録として残る仕組みです。慣らし期間の乗り越え方もご覧ください。

ことばの聞き取り – 補聴器あり・なしを比べます

最後のページでは、声の大きさを変えながら、ことばをどれだけ正しく聞き取れるかを測ります。補聴器をつけた状態とつけない状態を同じグラフに記入するので、補聴器で何がどれだけ変わったかが目で見て分かります。

結果の読み方の目安も載せてあります。

  • 80から100パーセント – 十分理解できる
  • 60から80パーセント – 日常的・普通の会話はほぼ理解可能だが、不慣れな内容は集中力が必要
  • 40から60パーセント – 理解できない場合がある
  • 20から40パーセント – ゆっくり話してもらわないと理解できない
  • 0から20パーセント – 聴覚のみでの会話理解は難しい
きこえの手帖の最後の見開き。左ページに補聴器装用閾値の4回目から6回目の記録欄、右ページにことばの聞き取りの記録グラフと結果の読み方の目安
最後の見開き。左が装用閾値の4〜6回目、右がことばの聞き取りの記録と結果の目安

音が聞こえることと、ことばが分かることは別だという話が、ここで数字になります。補聴器の調整はどう評価する?もあわせてどうぞ。

お客様に書いていただくのは2か所です

測定結果は担当者が記入します。お客様にお願いするのは、最初の問診と、装用アンケートの2か所だけです。

お店でその場で書いていただいても構いませんし、装用アンケートはご自宅で、実際の生活の中で確かめながら書いていただくほうが正確です。ご家族に見ていただいてもかまいません。

ご来店のときはお持ちください

調整や点検でお越しいただくときは、手帖をお持ちください。前回どこまで上げたか、どの場面で困っておられたかが残っているので、話が最初からになりません。

お買い上げの店舗以外にお越しいただく場合も、手帖があれば経過が分かります。引っ越しや旅行のときにも役立ちます。旅行や出張に持っていくときの注意点は「旅行・出張に補聴器を持っていくときの注意点」にまとめています。

まとめ

きこえの手帖は、聞こえの変化と調整の経過を1冊にまとめたものです。お客様に書いていただくのは問診と装用アンケートの2か所。ご来店のたびに測定結果が積み重なっていきます。

調整のときは、手帖をお持ちください

記録していただいた内容は、調整のときの大切な手がかりになります。前回どこまで調整したかが分かるので、続きから進められます。

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