「きこえの手帖」でわかる、あなたの聞こえの変化

新しい補聴器、思ったように聞こえていますか。
「つけてもうるさいだけ」「効果があるのか、正直よく分からない」——そんな声を、店頭でうかがうことがあります。
補聴器は、つけた瞬間に完成する道具ではありません。聞こえない状態に慣れてしまった脳が、もう一度音に慣れていくまでには、時間をかけた調整が必要です。補聴器サロンでは、その過程を「なんとなく慣れましたか」という感覚だけに頼らず、客観的な測定で確認しながら進めています。今回は、その仕組みである「きこえの手帖」についてご紹介します。
補聴器は「つけたら終わり」ではありません

補聴器を初めてつけた方の多くが、最初は「音がうるさい」「雑音が気になる」と感じます。これは故障でも、補聴器が合っていないわけでもなく、自然な反応です。
長く聞こえにくい状態が続くと、脳は「静かな状態」に慣れてしまいます。補聴器で音が入るようになっても、脳がその音を意味のある情報として処理できるようになるまでには、一般的に3〜6ヶ月ほどかかると言われています。この間、音量や調整を少しずつ見直しながら、脳を音に慣らしていく必要があります。
裏を返せば、「つけてすぐにうるさく感じる」のは、慣れていく途中の自然なプロセスです。大切なのは、その変化を途中で投げ出さず、正しく調整を重ねていくことです。
感覚だけに頼らない「客観的な効果測定」

とはいえ、「慣れてきた気がする」というご本人の感覚だけを頼りに調整を進めるのは、実は難しいことです。聞こえ方の変化は少しずつ起こるため、ご本人も気づきにくく、店舗側も「本当に効果が出ているか」を感覚だけで判断するのは限界があります。
そこで補聴器サロンでは、メガネの矯正視力を測るのと同じように、聞こえの状態を数値で確認しています。
- 聴力測定(オージオグラム):どの高さの音が、どのくらいの音量から聞こえているか
- 語音明瞭度測定:ことばがどのくらい正確に聞き取れているか
- 装用効果測定(ファンクショナルゲイン):補聴器をつけた状態と外した状態で、聞こえがどれだけ改善しているか
これらを来店のたびに測定し、記録を重ねることで、「良くなっている実感」を数字の裏付けとともにお伝えできます。逆に、思うように数値が伸びない場合は、その原因(音量設定・装用時間・環境など)を一緒に見直すきっかけにもなります。
満足度が低いのは、いちばん大事なところです
日本補聴器工業会が全国で実施している調査に、補聴器の満足度を項目別に見た集計があります。評価が高いのは「購入後のアフターサービス」70%、「販売員の接客対応」70%、「販売員の専門性」69%。一方で低いのは「音質の自然さ」42%、「音の明瞭性」40%、「音の豊かさと再現性」37%でした。
そして同じ調査で、全体の満足度にもっとも強く効いている項目を調べると、上位は音の明瞭性、音の豊かさと再現性、音質の自然さです。接客やアフターサービスよりも、音そのもののほうが効いています。いちばん効く項目が、いちばん満たされていないというのが、いまの補聴器の状況です。
場面別に見ると差はもっとはっきりします。1対1の会話は57%が満足しているのに対し、多人数での会話は39%、周りがうるさい環境での会話は36%、騒音下での聞こえ具合は34%。お店の静かな部屋では確かめられない場面ほど、満足度が低くなっています。
調整の有無で満足度がどう変わるかは、補聴器の効果はどれくらい?満足度54%と、差がつく理由をご覧ください。
だから、調整は一度では終わりません
同じ調査で「満足するまでに何回調整したか」をたずねた結果です。補聴器販売店で購入した方では、3回から5回が32%でもっとも多く、3回以上が合わせて53%。1回で終わった方は10%、一度も調整していない方は4%でした。
音質は買ったその日に決まるものではなく、通いながら詰めていくものだということです。そのとき手がかりになるのは、どの場面で、どんなふうに聞き取れなかったかという具体的な情報です。ところがこれは、数週間経ってから思い出そうとしても、なかなか出てきません。
その手がかりを残しておくための冊子が「きこえの手帖」です。
出典:JapanTrak 2025(一般社団法人日本補聴器工業会)。満足度は補聴器所有者 n=448、調整回数は補聴器販売店で販売員から入手した補聴器 n=349。
1冊にまとめる「きこえの手帖」

こうした測定記録を、1冊にまとめたものが「きこえの手帖」です。問診票から始まり、聴力測定・語音明瞭度測定・装用効果測定(最大6回分)までの記録を、来店のたびに書き足していきます。
ご自身の聞こえの変化を、グラフや数値で振り返っていただけるほか、担当スタッフが変わった場合や、他の店舗にご相談される場合にも、これまでの経過を正確にお伝えする記録としてお使いいただけます。
ご案内について
「きこえの手帖」は現在、下記の認定補聴器専門店にて、対象の補聴器をご購入いただいた方にお渡ししています。対象の補聴器は今後、順次拡大していく予定です。詳しくは店頭にてお尋ねください。
お取引先のメーカー担当者からも「ここまでの測定体制をとっている店舗はなかなかない」とのお言葉をいただいています。
まとめ
補聴器は、購入して終わりではなく、そこからの調整で聞こえ方が大きく変わっていきます。補聴器サロンでは、その過程を感覚だけに頼らず、「きこえの手帖」を通じて客観的な数字で確認しながら、お一人おひとりに合わせた調整を行っています。
聞こえのことでお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
※聞こえ方には個人差があります。効果を保証するものではありません。
調整のときは、手帖をお持ちください
記録していただいた内容は、調整のときの大切な手がかりになります。前回どこまで調整したかが分かるので、続きから進められます。



