騒がしい場所で聞き取りにくいのはなぜ?(マスキング現象)

「一対一の会話なら問題ないのに、レストランや親戚の集まりなど、人が多く騒がしい場所だと相手の声が聞き取れない」——これは、難聴のある方からとてもよく聞かれるお悩みです。実は、これには「マスキング現象」と呼ばれる、聞こえのしくみが関係しています。

目次

マスキング現象とは

「マスキング(masking)」とは、ある音が別の音によって聞こえにくくなる現象のことです。たとえば、静かな部屋で名前を呼ばれればすぐに気づけますが、大音量の音楽が流れている中では、同じ大きさで名前を呼ばれても気づきにくくなります。これは、音楽の音が呼びかけの声を「覆い隠して(マスクして)」しまうために起こります。

周囲の雑音(食器の音、他の人たちの話し声、BGMなど)が、話し相手の声とマスキングし合うことで、聞き取りが難しくなるのです。

難聴があると、なぜマスキングの影響を受けやすいのか

耳の聞こえに問題がない場合でも、騒がしい場所での聞き取りは誰にとっても多少難しいものです。しかし、感音難聴 がある方は、この影響をより強く受けやすいことがわかっています。

その理由のひとつは、必要な音(話し相手の声)と不要な音(周囲の雑音)を選び分ける能力が、聞こえに問題がない場合に比べて低下しているためです。脳 は本来、いくつもの音の中から必要な音だけを選び取って処理する働きを持っていますが、加齢性難聴などによってこの能力が落ちると、雑音の中から特定の声だけを拾い上げることが難しくなります。

また、高い音から聞こえにくくなる 加齢性難聴 の特性上、日本語の子音(「か」「さ」「た」行など、聞き分けに重要な高い音の成分を含む音)が聞き取りにくくなることも、騒がしい場所での聞き取りづらさに拍車をかけます。

マスキング現象の影響。静かな場所では相手の声はそのまま届き子音も聞き分けられるが、騒がしい場所では声が周囲の音に覆い隠され、か・さ・た行など高い音の成分から先に埋もれる。感音難聴があると必要な音を選び分ける力が落ちるため影響が強く出るが、静かな環境で測る健診の聴力検査には現れないことがある
同じ声でも、周囲の音があると埋もれます

静かな場所では困らないのに、健診では引っかからないことも

マスキング現象による聞き取りにくさは、静かな環境で行う通常の聴力検査ではうまく現れないことがあります。そのため、「健康診断の聴力検査では問題なしと言われたのに、実生活では聞き取りにくい」と感じる方が少なくありません。

このような聞こえにくさを詳しく調べるには、雑音の中での聞き取りを評価する検査(語音聴力検査など)が参考になります。気になる場合は、耳鼻咽喉科や補聴器専門店にご相談ください。

補聴器はマスキング対策にも役立つことがある

近年の補聴器には、周囲の雑音を抑えて話し声を聞き取りやすくする機能(雑音抑制機能や指向性機能など)が搭載されているものが多くあります。こうした機能について、詳しくは別記事で解説しています。

まとめ

「騒がしい場所で聞き取れない」というのは、多くの方が経験する自然な現象ですが、難聴があるとその影響がより強く出やすくなります。静かな場所での聞こえに問題がなくても、騒がしい場所での聞き取りにくさが気になる場合は、一度聴力検査を受けてみることをおすすめします。

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