難聴を放っておくとどうなる?認知症・社会的孤立との関係

「聞こえにくいけれど、日常に大きな支障はないから」。そう考えて様子を見ている方は少なくありません。ただ、聞こえにくさをそのままにしておくことには、会話が不便という以上の意味があると指摘されています。

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認知症の危険因子として挙げられています

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会は、2017年の国際アルツハイマー病会議で難聴が高血圧や肥満、糖尿病などとともに認知症の危険因子の一つに挙げられたこと、そして2020年には予防可能な12の要因のうち難聴が認知症の最も大きな危険因子であると指摘されたことを紹介しています。

同学会は、その理由として、難聴によって脳に伝わる音の刺激や情報量が少ない状態が続くと、脳の萎縮や神経細胞の弱まりが進むことを挙げています。聞こえは耳だけの話ではなく、脳の働きと結びついています。この関係は音を聞いているのは耳ではなく脳?でもご説明しています。

ただ、この関係はあまり知られていません。日本補聴器工業会の全国調査で、聞こえに困っている方に「難聴と関連していると思う健康問題」をたずねたところ、認知症を挙げた人は23%、57%は「どれとも関係しているとは思わない」と答えています(出典:JapanTrak 2025(一般社団法人日本補聴器工業会)。難聴者 n=1,380)。

会話が減ることの影響

同学会は、コミュニケーションが難しくなることにともなう社会的孤立や抑うつ状態も、認知症の危険因子とされていると述べています。

売り場でも、似たお話をうかがうことがあります。聞き返すのが申し訳なくて相づちで済ませるようになった。集まりに誘われても断るようになった。ご本人は「面倒になっただけ」とおっしゃるのですが、その手前に聞き取りづらさがあることは珍しくありません。

同じ調査には、補聴器を使っている方と、同じくらい聞こえにくいのに使っていない方を比べた集計もあります。うつの傾向をみる簡易スクリーニングで「リスクがとても低い」に入ったのは、補聴器をお持ちの方が53%、使っていない方が37%。睡眠の質に満足していると答えたのは、それぞれ56%と40%でした。

ただしこれは同じ時点で比べた差であって、補聴器を使ったからそうなった、と言い切れるものではありません。もともと前向きに動ける方が補聴器も使っている、という向きの説明もできます。参考として見ていただく数字です(出典:JapanTrak 2025(一般社団法人日本補聴器工業会)。補聴器所有者 n=355、聴力レベル上位50%の補聴器非所有者 n=195)。

補聴器で防げる、とは言えません

ここは正確にお伝えしておきたいところです。補聴器を使えば認知症を防げる、という言い方はできません。学会が述べているのは、補聴器の使用など適切な対処によって認知症を予防したり発症を遅らせたりする可能性が期待されている、という段階の話です。

補聴器は聞こえを治す機器でもありません。何ができて何ができないのかは、補聴器は「治す」機器ではありませんで整理しています。

それでも、聞き取りづらさを放置して会話の機会そのものが減っていく状態と、補って会話を続けられる状態とでは、日々の過ごし方が変わります。私どもがお手伝いできるのはそこです。

実際には、どれくらい待ってから使い始めているか

同じ調査で、難聴に気づいてから初めて補聴器を購入するまでにかかった年数をたずねた結果です。1年が29%、2年が18%、3年が22%、4〜6年が11%、そして6年以上が20%。補聴器が必要だと感じた年齢は、中央値で70歳でした。

そのうえで、補聴器をお持ちの方の56%が「もっと早く使用していればよかった」と答えています。早く使っていたら得られたと思うものを聞くと、1位が「より快適な社会生活」で75%、2位が「より安定した精神状態」で35%でした。

後悔の中身が「聞こえ」そのものではなく、人との過ごし方だったというのは、示唆的な結果だと思います。

出典:JapanTrak 2025(一般社団法人日本補聴器工業会)。補聴器所有者 n=448。

JapanTrak 2025の調査。難聴に気づいてから最初の補聴器を購入するまでの年数は、1年以内29%、2年18%、3年22%、4〜6年11%、6年以上20%
難聴に気づいてから、最初の補聴器を買うまでにかかった年数

実際に使っている方が生活の何が変わったと感じているかは、補聴器の効果はどれくらい?満足度54%と、差がつく理由にまとめています。

早いほうがよい理由

聞こえにくい状態が長く続くと、脳が「聞き取る」ことから遠ざかります。そのため、補聴器を使い始めてから音に慣れるまでに時間がかかることがあります。これは機器の性能の問題ではなく、慣らしの期間が必要になるということです。

早い段階で使い始めた方のほうが、この慣らしが短く済む傾向があります。困ってから、ではなく、気になった時点で一度測ってみるという選び方をおすすめしています。

まとめ

難聴は、認知症の危険因子の一つとして公に指摘されています。補聴器がそれを防ぐとは言えませんが、聞こえを補って会話を続けられる状態を保つことには意味があります。

まずは耳鼻咽喉科での受診を。何科に相談するかはこちらにまとめました。当店でも聴力の測定とご相談を承っています。

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